大判例

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大阪高等裁判所 昭和60年(う)1255号 判決

本店所在地

大阪市港区市岡元町三丁目六番一〇号

地田

株式会社

右代表者

地田勝三

本籍

富山県黒部市石田野三三八番地

住居

大阪市港区市岡元町三丁目六番一〇号

会社役負

地田勝三

昭和一七年三月一〇日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、昭和六〇年一一月一一日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人ら及び原審弁護人から各控訴の申立があったので、当裁判所は次のとおり判決する。

検察官 川瀬義弘 出席

主文

本件各控訴をいずれも棄却する。

理由

本件各控訴の趣意は、弁護人友添郁夫作成の控訴趣意書記載のとおりであり(ただし、第四項六行目の「別表の1から」の次に21を加入する。)、これに対する答弁は、検察官川瀬義弘作成の答弁書記載のとおりであるから、これらを引用する。

弁護人の各論旨は、いずれも原判決の量刑不当を主張するので、所論にかんがみ記録を調査し、当審における事実取調べの結果をもあわせ検討すると、本件は、二か年間の事業年度にわたり、架空外注費を計上するなどの方法により、法人税合計三八、九二三、三〇〇円のうち三三、四〇〇、〇〇〇円を免れた法人税法違反の事案であり、その犯行期間、ほ脱額、ほ脱率(昭和五七年一月期の年度分は八二パーセント、昭和五八年一月期の年度分は八八パーセントといずれも高率であり、順次上昇している。)に徴し、また、ほ脱の手口も、その主たる方法である架空外注費の計上に当たっては、予め他会社から入手しておいた未使用の同会社名義の請求書、領収書を利用し、或いは架空の会社を作出してその名義を使用するなど、巧妙悪質であることや被告人地田勝三において被告人会社の従業員に対し積極的に右ほ脱の方法などを指示していることなどの情状にかんがみると、本件ほ脱の動機の一端がいわゆる近隣対策費の捻出にあったこと、被告人地田勝三が本件後は反省し、本件ほ脱にかかる被告人会社の法人税、重加算税及び地方税を納付し、また新たな税理士に指導を受けるなどして今後は正しい納税をするよう努力していること、その他所論の被告人らにつき酌むべき一切の事情を斜酌しても、被害人会社を罰金七五〇万円に、被告人地田勝三を懲役八月執行猶予三年に処した原判決の量刑は重過ぎるとはいえない。なお、所論は、被告人会社においていわゆる近隣対策費を支払っても、経費として処理することができない、というが、本件所得金額の計算は、財産増減法によっており、右近隣対策費が実際に支払われていれば、それは計算上当然に所得から控除されていることになるから、右近隣対策費の支出は、単に本件犯行の動機を形成するにすぎないものである。各論旨はいずれも理由がない。

よって、刑事訴訟法三九六条により主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 家村繁治 裁判官 田中清 裁判官 久米喜三郎)

昭和六〇年(う)第一二五五号

○ 控訴趣意書

被告人 地田株式会社

右代表者代表取締役 地田勝三

被告人 地田勝三

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、被告人らは左記のとおり控訴趣意書を提出いたします。

昭和六一年一月一七日

右被告人ら弁護人

弁護人 友添郁夫

大阪高等裁判所第六刑事部 御中

原判決は

「被告人地田株式会社を罰金七五〇万円に、被告人地田勝三を懲役八月に処する。

被告人池田勝三に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。」

旨の判決を宣告した。

然しながら、原判決は量刑不当であるので、到底破棄を免れない。

一 公訴事実について

公訴事実はすべてまちがいありません。

被告人らは、大阪国税局収税官吏大蔵事務官及び検察官に対し、当初から、本件公訴事実について自白し、当然のことながら捜査に積極的に協力してきました。

二 被告人の身上経歴及び被告会社の概要

被告人地田勝三(以下被告人地田という)は、昭和四一年ごろ、解体請負業を営む株式会社磯田組に就職いたしましたが、昭和四八年に独立し、個人で解体請負業を始め、昭和五四年三月二〇日には、一般解体請負業等を目的とする地田株式会社を設立し、代表取締役に就任いたしました。

被告人地田株式会社(以下被告人会社という)は、右のとおり、昭和五四年三月二〇日被告人地田勝三が個人で営んでいた解体請負業である地田組を法人組織にして設立された株式会社であって、一般解体業等を目的とする資本金二、五〇〇万円の株式会社であり、設立当初から現在まで、被告人地田勝三が代表取締役として、その業務全般を統括しています。

被告人会社の慨要について述べます。

既にお取り調べいただきました被告人会社の経歴書は昭和五九年一一月現在のものです。右経歴書をみても明らかなとおり、被告人会社はゼネコンから解体工事を請負った元請から注文を受けており、官公庁から工事を受けることはありません。

被告人会社の概要は、現在次のとおりです。

従業員 職員八名、オペレーター二五名、直傭枝術工五五名

保有車両 五〇台

三 本件犯行の動機及び態様

1 一般解体業というのは、説明の必要はないかとも思いますが、鉄筋・鉄骨・レンガ造・木造のあらゆる建物、工場の煙突その他すべての建造物・構築物等を解体し、整地することを業とするものです。

ところで、前記のような建築物等を解体するに当たっては、最新式機械をもってしても、多少なりとも、騒音・振動・粉塵が発生し、又建物等を解体した廃棄物を運搬する必要があります。そのため、近隣住民に対し、多少なりとも迷惑をかけることになりますので、かかる工事着工に当たっては、近隣住民に対し、迷惑料を支払い、これの承諾を得ない限り、かかる工事に着工することはおよそ不可能です。

さらに、かかる工事をすることを聞き付けた団体が、自らは工事をする意思も、又その能力もないのに押し掛け、工事をやらせろという理不尽の要求をなし、暗に金員を要求する者があり、かかる申し出に対しては、適切な措置を講じない限り陰に陽に工事の妨害をはかる行動に出るので、工事を円滑にすすめるためにやむを得ず解決金を支払わざるを得ない場合があります。

このようなところから、解体工事に着工する前に十分に近隣体策をなし、近隣対策費を支払って工事をなすについての承諾を得て始めて、ようやく、かかる工事を着工することができるものです。

近隣対策費の額については、まず、元請と下請である被告人会社との間で、見積書に基づき、工事費について協議決定し、又近隣対策費についてもその額について協議のうえ決定し、もって近隣対策費を含んだ請負工事代金の額を決定するものです。

そして、近隣対策は、元請がこれを担当する場合と下請である被告人会社がこれを担当する場合とがあります。その比率は、元請がこれを担当する場合が七割、下請である被告人会社がこれを担当する場合が三割です。

元請が近隣機対策を担当する場合は、被告人会社は、元請企業と被告人会社との間で協議決定した近隣対策費に担当する額を元請企業に対して工事着工前に支払い、後日工事完成後に近隣対策費を含んだ工事代金の支払いをうけることなりますが、この場合元請企業からはこれの領収書を受取ることが出来ません。

被告人会社が近隣対策をなす場合は、被告人会社が直接近隣住民などに対し近隣費を支払いますが、この場合、被告人会社は近隣対策費を支払ったにも拘わらず近隣住民等から領収書を受取ることができません。

いずれにしろ、被告人会社は、近隣対策費を現実に支払うにも拘わらず領収書がもらえないものです。業者は好き好んで近隣対策費を支払うものでもなく、これはあくまでも近隣住民の要求により支払うものであって、業者としては、これを支払わないで工事をすることが出来ればこれにこしたことはないのですが、住民等の要求が厳しいために支払わざるを得ません。住民等がこれを要求したにも拘わらず業者がこれを支給しないとか、その補償金額が少なかった場合は、住民等は実力行使をしたり、又、いかがわしい代理人がが登場しますので、業者としては住民等の要求を受けて慎重に協議検討のうえこれを支払わざるを得ません。

いずれにしろ、被告人会社は、近隣対策費を現実に支払うにも拘わらず、住民等から領収書がもらえないことから、このように真実近隣対策費を支払っても経費として処理が出来ないところから、被告人会社はやむを得ず架空の工事による経費水増しの処理をなしたものです。これが本件公訴事実です。

そして、前記のとおり、近隣対策費は請負工事代金と一緒に工事完了後支払われるものですが、近隣対策費は工事着工前にこれを支払う必要があることから、架空名義の預金通帳をもうけ、架空経費の水増しにより予め近隣対策費を捻出していたものです。そして、これの入出金はすべて事務員にさせていましたし、被告人会社の従業員のほとんどが右の事実を知っていました。

ところで、右架空名義の預金通帳には、右のとおり、架空経費による経費の水増しによる金銭のみならず、被告人地田の給料やそれ以外の被告人地田個人の正当な金銭をも一緒に預金していましたから、被告人地田のやましいところのない金銭と架空経費の水増しによる金銭とがふくまれていますので、架空名義の預金や株式がすべて申告洩れの金銭ではありません。国税庁における本件捜査の週程において、被告人地田個人の正当な金銭と申告洩れとを区別してもらって、申告洩れの金銭を確定してもらった金額が本件公訴事実の金額です。

被告人地田は、海外旅行をしたことがありますが、これとて遊びのためではなく、主催者の立場を考え、営業政策上お付き合いをしたものです。

又被告人名義のゴルフの会員券につきましても、これを営業上の付き合いから、これを購入せざるを得ないために、近隣対策費として予め準備していた金銭からこれを購入したものです。

被告人会社及び被告人地田は、このように自己の私利私欲のために、架空経費を計上して所得税を免れようとしたものではありませんし、又現実に被告人地田が、私利私欲のために金銭を使用したことはありません。ほ脱金額は近隣対策費にのみ支払っております。したがって、近隣住民等から領収書を受取ることができたのであれば、被告人会社は架空経費を計上する必要はなく、本件の如きほ脱という問題は一切発生しなかったものです。

2 次に、検察官は、請負代金等を除外した旨主張されていますが、被告人会社は請負代金を除外したことは一切ありません。

請負代金は、元請から小切手又は振込送金により支払われています。

被告人会社は、例えば、建物等の所有者から直接解体工事を請負うことは全くありません。

したがって、例えば、解体費金一〇〇万円のところ、金八〇万円の領収書を発行し、差額の金二〇万円の売上除外をする等一切しておりません。

ところで、ビルの解体の場合は、これに伴ない鉄のスクラップが出ます。スクラップの量が多いか少ないかは解体する建物によって、当初から予想することができます。この量が多い場合は、このスクラップの売上代金は元請が取得する旨の契約がなされるのが一般的です。この場合は、鉄のスクラップの売上代金は当然に元請に返還しております。解体工事に伴ない生ずる鉄のスクラップが少量の場合に、当初から被告人会社がこれを取得するという契約がなされる場合がありますので、この場合は被告人会社は当然売上に計上しています。

ところで、構築物等の解体等、スクラップが出るとしてもごく少量であるような場合、スクラップの帰属を当初の契約で定めないで解体請負工事契約をすることがあります。被告人会社は、本件捜査を受けるまでは、右の場合当初売上に計上しないで、スクラップの売上高がはっきりした時点で、元請にこれを報告していました。

そして、元請の指示で、これを元請に返還したり、これの売上金額が少額であるところから、これが被告人会社が取得しても差し支えない旨指示されたもののうち一部が売上除外としたものがありましたが、これの金額は少額です。

このように、被告人会社は当初から売上除外をするつもりはありませんでした。

しかしながら、今後はこのようなことを一切しないことを誓っています。

四 本件申告漏れ金額は次のとおりである(別表参照)。

自 昭和五六年二月一日

至 昭和五七年一月三一日 金二、九三九万六、二二九円

自 昭和五七年二月一日

至 昭和五八年一月三一日 金五、三四三万五、七三〇円

右金額は右各事業年度の修正申告書の別表の1から を控除した金額である。

ところで、右各事業年度について、次の各勘定科目が税務当局によって否認された。

自 昭和五六年二月 一日 自 昭和五七年二月 一日

至 昭和五七年一月三一日 至 昭和五八年一月三一日

借入金 金一、〇八二万七、〇八四円 金一、六一〇万円

特別償却 金 八四一万円 金一、〇一七万一、七一〇円

計 金一、九二三万七、〇八四円 金二、六二七万一、七一〇円

右のとおり、本件ほ脱事件は他のほ脱事件と異なり、税務当局において、現実の被告人会社の借入金を否認し、さらに青色申告の場合当然認められる重機等の特別償却が否認されたため、右否認された借入金及び待別償却の金碩が申告漏れの金額と評価されたものであり、これらは被告人会社が売上除外をしたり、架空経費の水増しをしたものではなく、単なる税法上の処理が被告人会社の見解と税務当局の見解と異なったことによるものであり、右借入金及び特別償却が否認されたために、ほ脱金額が数字の上で高額になったものであるが、被告人会社の現実のほ脱金額は、右借入金及び特別償却を控除すれば、きわめて小額である。

即ち昭和五六年二月一日から昭和五七年一月三一日までの間の事業年度における現実の申告漏れの金額は金一、〇一五万九、一四五円、昭和五七年二月一日から昭和五八年一月三一日までの間の事業年度における現実の申告漏れの金額は金二、七一六万四、〇二〇円であり、被告人会社が二年間にほ脱した金額は総合計金三、七三二万三、一六五円に過ぎない。したがって、本来ならば、これに対する脱税を算定することになる。

五 被告人会社が法人税を免れた金額は、右借入金及び特別償却を否認されたために、公訴事実記載のとおり、合計金三、三四〇万円となった。

ところで、被告人会社は本件捜査によりこれの金額が確定後直ちに修正申告をなし、次の免れた法人税、重加算税、府民税、市民税等合計金六、六三五万円をすべて完納いたしました。

自昭和五六・二・一 自昭和五七・二・一

至昭和五六・一・三一 至昭和五八・一・三一

法人税関係

法人税を免れた金額 金一二、四六一、九〇〇円 金二二、八四五、八〇〇円

重加算税 金 二、六七六、〇〇〇円 金 六、〇六三、〇〇〇円

過少申告加算税等 金 九五、〇〇〇円 金 三六、一〇〇円

府民税関係

府民税 金 七七四、三二〇円 金 一、三九九、六七〇円

事業税 金 三、九五二、二二〇円 金 七、一三二、一〇〇円

重加算税 金 八三一、〇〇〇円 金 一、八六八、一〇〇円

市民税関係

市民税 金 一、八九五、七五〇円 金 四、四二七、七四〇円

合計 金二二、五九一、一九〇円 金四三、七五〇、四一〇円

六 前記のとおり、被告人会社は法人税、重加算税等合計約六、六三五万円の税金を完納いたしました。これにより、被告人会社及び被告人地田は十分に処罰を受けています。

そして、右税金を支払ったため手もとの現預金が全くなくなってしまいました。そのため罰金七五〇万円を支払う資金が全くありません。又、本件発生後近隣対策費を必要とする工事については、極力これを受注しない方針にしておりますので、売上高も大巾に滅少してしまいましたが、固定経費は変動ありませんので、赤宇経営を続けておりますので、資金繰りに窮し、会社の継続について深刻な悩みを抱えています。

被告人会社及び被告人地田は、本件捜査後反省し、これまで経理担当者が二名であったのを四名に増加させ、又顧問税理士長井明を新たにお願いして同税理士の指導を受けながら、今後一切かかる不正を行なわないよう真剣に取り組んでいます。

近隣対策費について言えば、当局より工事現場毎にこれを計上することにし、税務申告にいたっては使途不明金としてこれを処理することの指導を受けましたので、本件捜査後において近隣対策費を必要とした場合は、このように処理をしており、今後は不正は一切いたしません。スクラップの売上についても必ず売上計上いたします。

被告人地田は今後如何なる不正も犯さないことを誓っており、改俊の情が顕著です。

被告人会社及び被告人地田は再犯の虞れがありません。

以上述べました諸般の事情を御勘案のうえ、何卒被告人会社に対する罰金刑を減刑していただきたく、又被告人地田に対する刑を減刑していただきたくお願い申し上げます。

〈省略〉

○ 控訴趣意書

被告人 地田株式会社

右代表者取締役 地田勝三

同 地田勝三

右の者に対する法人税法違反被告事件について、被告人らは先のとおり控訴趣意書を提出いたします。

昭和六一年一月一七日

右被告人

右代表者取締役 地田勝三

被告人 地田勝三

大阪高等裁判所第六刑事部 御中

私 地田(株)代表者地田勝三です。

前回大阪地方裁判所で裁判を受けた私です。

この年になって国税庁や検察庁、ましてや裁判所等行った事もない私ですが、今回の事件で始めて裁判を受け判決を言い渡されました。只戸惑いと恐さでいつの間にか終っていました。

自分の言いたい事も、主張も出来ませんでした。

田舎者の為、偉い人の前に出ると言葉が出なくなり思っている事も言えなくなります。

今迄事業をしていながら、銀行さえも数回しか行った事がない位、銀行に行くのは嫌いです。

国税や検察庁へ行った時は、後の事等考えず早く帰える事ばかり考えていました。

しかし判決を聞き、自分の思っていたのと、全々違って居ました。

私は国税庁の調べの時、修正申告をして、不起訴になるだろうと聞いて居り、得意先や施主に迷惑を掛けると次からの仕事も貰えなくなる為、支払先や払った金額はは言えませんでした。架空外注費で計上した分は、対策費等で支払ったもので、自分の為には使っておりません。

それ丈の金が有れば、今のプレハブの事務所等には住んでおりません。又私が裁判の時、言えば良かったのですが、税金を払うのは馬鹿らしいと、調書には書いて有りますが、私の口から出た事では有りません。調べる人が税金を払ってない事は、そう言う事だと言って調書に書いたのです。

私は今、個人としても、年間何百万円もの税金を自己申告で払って居ります。国税や検事調書では、悪く書いて罪を重くするのが、私らの仕事やと言われましたが、私の仕事は解体工事をして居る為、非常に悪い様に思われて居りますが、罪を重くと言われる前に、この建設業の中でも、解体工事は一番初めの仕事です。対策が必要になります。建築工事全体の五%が普通で少なくとも三%とも言われる対策費が必要なのです。近隣対策と言うのは、近所の住民や、通行の住民だけでは有りません。たとえば、工事金額が二億円なのに対して、対策費が七千万円も取られた例も有る位、この業界は狂って居ります。強い者には逆らえませんが、こんな事で我慢しなければいけないのでしょうか、居間の仕事は時には土曜日で会社が休みとか、昨日は夜勤だったので今日昼間は寝てるから、作業を止めてくれとか、言われても、今の世間では、中止するか、対策するしか有りません。私は学校も黒部の分校で育った田舎者で今の都会では少々荷が重かった様に重います。又裁判の時になりますが、公共事業等して居ると言われましたが、公共事業は官庁や役所へ通って居りますが、一度も元請で貰った事は有りません。公共事業は各種団体やゼネコン等であって、私の会社では直接取れません。でも工事をするのは、作業員や機械を持って居る私達解体業者で下請します。公共事業の単価は非常に高い値で落札され、業者で貰うのは、色々有りますが、約六〇%位の値で工事します。

その上対策費がいります。その請負金額の中で社員が「一丸となって、人の倍の仕事を頑張ってしよう」。とはげまし有って出来て居る会社です。ある日税務署員が来て、この会社の者は、背番号を付けて居るのか、と言われた事が有ります。それは作業服に汗の塩が白く突き、解体時の埃が付いて汚れて会社に帰って来るのを見てと思います。それで私は大変怒った事が有ります。正しい目で見て貰えると思っているお役人さん迄もそんな人がいるのです。私は独立してから数多くの解体をして来ました。その中でも工事をするなら、お前を殺すとか、家族を全部殺すとか、言われ金で解決するしかない場合が良く有ります。それをしない場合、朝迄毎日のように電話をかけて、いやがらせをするといった具合です。大手建設会社や施主はそのようなめんどうな時は、業者と相談して呉れと言って逃げてしまいます。

会社としては、その都度逃げていては、多くの従業員を使って行く事が出来なくなります。会社従業員が多いので、早く少なくしなさいと良く言われますが、八割位は元私が努めていた会社からで解体業者の倒産等で子供の学校へ行く費用がなくて使って呉れと言って来た人達です。そんな従業員に今やめてくれと言えますか。この問題が起きた時、私はやめる決心でおりました。が得意先や諸先生方に、従業員や従業員の家族の事を考えて見ろ、罪もない者をどうする気や、世間もいつかはわかってくれる時が来るから、一生懸命頑張れと言われ、今日迄借金をして九千万近い税金を払って来ましたが、対策費用等の事で仕事も少なくなり、どうして良いか分からなくなって来ました。又、この仕事を続けて行くには、いくらまじめにと言っても世間が変らない限り、したくもない対策費等の為に前科者に迄なって、続けねばならないのかと思うと、腹が立って致し方有りません。五年前に家内に仕事を取るか、家族を取るかと言われて苦しんだ時家庭を取っていれば、このように人様に迷惑を掛けなくて済んだのにと今頃になって反省しています。

判事さん、検事さん、今の建設業界を調査の上、今一度指導改善をして、業界を働きやすい業界に少しでも直すよう指導して下さい。その上での判決ならたとえどんな苦しくても、人に負けない位、世の中の為に頑張ります。

地田株式会社

代表取締役者 地田勝三

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